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10月1日(水)/晴れ・25℃

残暑に辟易していたのがつい数日前。それが今日はもう、見事な秋晴れです。

テレビのニュースでは、日本アルプスの初冠雪や東北の紅葉を報じています。何だか、季節がこの2,3日で入れ替わったみたいな感じです。

そうそう、そういえば、こんな季節を詠った和歌があります。

『夏と秋と 行きかふそらの かよいぢは かたへすずしき 風や吹くらん』(古今集)

「その先の海」ご愛読いただいて感謝しております。

この航海記を掲載してから今日まで、禅のHPに約4500回のアクセスを頂いたことになります。多くの方々に楽しんで頂いていると思うと大いに張り合いを感じます。

今回の掲載は、フレンチ・ポリネシアのソサエティー諸島(タヒチやボラボラが属する)のライアテアという島での2ヶ月。滞在の期間も永かったですが、本当にいろんなことがありました。


書き切れなかったことや語り尽くせなかったことが多々ありますが、ライアテアで特筆すべきは、ゆっくり時間をかけてパラダイスというものの本質に触れたことでした。

パーティーで楽しい時を過ごし、ふとデジャヴのような思いに捉われた瞬間、ここまで来なくては味わうことのなかった不思議な至福を感じことがありました。その記述は本文でじっくり味わってみてください。あの思いこそがパラダイスというものの実態であり、そういう感覚に身を任せて過ごすことを求めて、人々は、はるばる旅をするのだと思います。


つい先頃、琵琶湖でヨットの傷ましい事故がありました。

湖畔でバーベキューを楽しんだ後、夕刻から強風注意報が発令されている湖へ、あろうことか、たくさんの幼児を乗せて出航したそうです。

船体構造等の詳しいことは分かりませんが、バラストキールという下向きの垂直尾翼のような錘が船底についたヨットが転覆する理由は、ブローチングという現象以外に考えられません。ヨットが風で吹き倒されるとすれば、秒速30メートル以上の風と思いますが、そんなには吹いていたとは考えられません。

ブローチングとは、ヨットに過剰の推力を与えられると、船自体が安全な体勢に立ち直ろうと風上を向く力学的な動作のことです。その折、急激な回頭運動で船は横倒しの状態になります。その瞬間、船体構造的、或いは、操船の未熟による不測の事態が加わったのだろうと思われます。

しかし、何といってもそうした海況を顧みず、子供らを乗せて出航したという愚行が最大の事故原因です。

ヨットの世界には危険を喜ぶ輩がいます。スリリングではありますが、冷静に見れば単なる気負い、或いは、誤った勇気を誇示する見栄でしかありません。そして、斯く云う私も昔はそうだったかも知れません。しかし、外洋航海で本物の自然の威力を体感し、さらにパラダイスの本質に触れて以降、そういう虚勢が如何に愚かしいかを悟ることができました。

私は、遭遇した危険を吹聴する航海者を真のセーラーとは認めません。それは、無謀なスピードで車を走らせて自慢する輩と同質です。その人本人が走った訳ではなく、ただアクセルを踏み込んで車が走っただけのことです。ヨットの場合も同様です。嵐の中を自分で泳ぎ切ったのではなく、ヨットという安全な乗り物が嵐を凌いでくれただけのことなのですから。

ヨットの外洋航海は冒険ではありません。あくまでも謙虚に自然に対峙し、人生の充足を求め、やがてパラダイスに辿り着くプレジャーなのです。


話は変わりますが・・・

航海に出る数年前、バブル景気で新刊の雑誌が乱発された折、或る出版社から中年女性を対象とした新しい雑誌のために、短編読み切りの軽い風俗小説を「シルバー・ロマン・シリーズ」と称して依頼されたことがありました。私は、雑誌社の要望に応えて数編の小説を書き上げましたが、景気の急降下で発刊が見合わせになり、遂に日の目を見ることはありませんでした。

先日来、それらを整理して3編ほどまとめてみましたので、軽い読み物として作品集に掲載いたします。軽すぎて落胆される方もあろうかと思いますが、ちょっと息抜きという程度にお楽しみいただければ幸いです。

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