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8月25日(土)/晴・高曇り・南西の風弱し・29℃/heat of late Summer

永田 萌のモチーフによる習作・春の里

随分ご無沙汰したようです。

8月14日、丁度2ヶ月振りに引越し荷物が届き、その整理に追いまわされていました。

不思議なのは、34フィートのヨットに納まっていた物が、どうしてこの2LDKに入らないのかということです。37個もの段ボール函を、玄関やダイニングと二つの部屋に入り切らず、入口の通路にまで積み上げていました。

差し当たって収納場所が明らかな物から開封し、然るべき場所に納め、一つずつ箱を減らしていって、何とかカンとか一週間以上も掛けて、曲がりなりにも納まったような訳です。

それでも、台風11号が来るというので、慌てて押入れに空きスペースを無理矢理作り、外の通路に置きっ放しの物を押し込み、見てくれが落ち着いただけで、本当はまだ全てが終わった訳ではありません。

そんな中、いろいろ航海の軌跡を記録した航海日誌やログブック、フォトアルバムなどが見られるようになりました。それに、前からそれとなく準備していた資料なども揃い、私の航海の思い出を綴り始めたところです。

今時、ただの航海記に興味を持って下さる方も居ないと思います。それで、オムニバス形式とはいかないまでも、折々の事実に基づいた記述の章にフィクションの章をいくつか挟み込んでゆくというのはどうかと考え、そういう方向で書き始めました。

ノンフィクションの記述から、余りにも雰囲気が違ったフィクションに移るのではなく、ごく自然な調子で移行できればいいと思います。そうすると、全体を通して、いくらかでも幻想的で、ために過剰にシリアスにならずに纏められるかと目論んでいるような訳です。

とはいえ、事実に基づいて書くと、二日に一度はひどい時化に会っており、ついつい辛い場面が多くなります。それに、快適な場面というのは、えてして日誌には記録されていません。読後感が、あまり肩の凝る悲壮なものにはしたくないと考えるものの、はたしてどんな展開になるものやら・・・。

南太平洋で、エープリル・フォースII、唯我独尊、ファーザー、禅の四艇がいっしょに行動した時期がありました。現在、ファーザーはハワイに停泊し、LAか、それとも南太平洋へ出ようか思案中ですが、そんな折、エープリル・フォースのクニさんとノビさんがニュージーランドから一時帰国することになりました。独尊の片嶋さんからのお手紙によると、9月23日にクニ・ノビのお二人が鹿児島を訪ねるそうで、みんなで集まろうとお誘いがきました。

みんな肉親以上に懐かしい人々です。ファーザーのケンちゃんが居ないのが本当に残念ですが、片嶋さんのところに、水晶(みずき)ちゃんという赤ちゃんが生まれたという嬉しいニュースもあります。若し、行けたら楽しみがどっさりあります。

それに、AUに居た頃、帰国したら必ず伺いますといった今給黎さんとの約束もまだ果たしていません。そんな訳で、諸般の事情が許せば、是非、鹿児島を訪ねようと考えているところです。

挨拶といえば、本当のところ、どこにも挨拶をしていません。気にはなっているのですが、世界一周を成し遂げての挨拶ではなし、何となく負い目もあって足が向かないといった感じです。本来なら、舵社や、出航時お世話になったマリーナや、応援して下さった友人やハム仲間に、何を措いても・・・というのが筋なのに。若し、これを読んで下さっている方で、“あいつはまだ挨拶に来ない!”とご立腹の方がいらっしゃったら、このレターを通じお許しをお願いしておきます。多分、もう少し経てば、私のおかしな負い目も自分の中で整理がつくと思いますから。

台風11号は、ここ藤沢ではひどい暴風もなく過ぎました。しかし、台風が通り過ぎると、目に見えて秋が近づいてきます。今日は残暑が厳しいようですが、確実に夏が終わろうとしているのが感じられます。この季節、いつも思うのですが、夏が去って行くのって、何かとても寂しい気がします。私の季節感では、一年が晩夏で終わるのかも知れません。

8月28日(火)/晴・南の風・30℃・湿度52%/fine

8月もいよいよあと数日。すっかり秋めいてきました。それでも今日は30℃。残暑というやつですが、湿度が高くないせいでしょう、とても快適は日です。

この数日、気に掛けていた旧い友人たちから、立て続けに連絡がありました。主にかつて勤務していた朝日広告社関連の方々ですが、彼等によると、そろそろ押しかけてもいい頃ではないかということです。どうもこちらからは、なかなか足が向かないという状況でもあり、しかも気に掛っていた連中だったので、私としては大いにありがたい話です。「いつでもウエルカム!」と答えました。何時、どんな顔ぶれで押しかけてくるか、今から楽しみにしています。

創作の方は、物凄く快調です。あんなに書けない書けないと嘆いていたのに、いざ書き始めると、たちまち100枚(400字詰め換算)を超えてしまいました。

この分だと、第1巻は、日本―カナダ、第2巻をアメリカ西海岸、第3巻を南太平洋という具合にするのも好いかなと考えています。

現在、約100枚辺りで、カナダ接近を書いていますから、ビクトリア、バンクーヴァーと進み、バンクーヴァーでの歓迎や楽しい日々を綴り、アメリカ(シアトル)ヘ向け出国という辺りで150枚ほどにもなるかと思います。

航海の実録に、このホームページにも収めている短編をいくつか挟みこみました。枚数が驚異的に進んでいるのは、そういう訳でもあるのですが、ネタを使い切った時、はたして良質の新しいフィクションが容易に書けるかどうか、この先が少し心配です。

急転直下、話が飛躍しますが、やはり日本の物価は相当に高いということが明らかになりつつあります。

というのは、当初予定していた消費金額を50%近以上も超えて、預金残高が減って行きます。初めの1、2ヶ月は、常にはない出費があるので仕方がありませんが、やっと落ちついてきた昨今、このままじゃ早晩破産すると不安になります。

こんな所で異常な物価高をどうこういっても埒があきませんから、私の生活規模をどうやって縮小して行くか、真剣に考えなければと思います。そういいながらも、花屋にきれいなバラが入荷すると、今日も前後の見境なくどっさり買い込んでくる按配です。まあ、この辺から意識改革が必至と肝に銘じていますが、どうなることやら・・・。

9月2日(日)/晴・28℃・湿度55%/fine

昨日、9月1日、友人たちが私を訪ねてくれました。

来て下さったのは、かつての同僚たち。高原、斎藤、関本の三氏でした。他の方々は、話が急で、予定の繰り合わせが出来なかったそうで、次の機会には是非伺いたいといってくれたそうです。本当にうれしいことです。

12時。約束通り電話が鳴りました。高原さんからです。斎藤さんと今、辻堂の駅にいて、これからバスに乗るとのことでした。関本さんは単車で来ていて、この辺の土地鑑もあるとかで、一足先にこちらへ向かったとのことでした。

私は、ドアに「バス停へ迎えに行って来ます。中へ入ってお待ち下さい」と張り紙をして出掛けました。バス停では、ほどなく高原さんと斎藤さんを迎えました。7年振りですが、二人ともほとんど変わっていません。元気そうなので、とても嬉しく思いました。二人を案内して我が家へ帰ると、関本さんが、台所で料理を始めていました。もともと器用な方でしたが、この7年間で、超家庭的に変身したという意味で、いちばん変わったのは関本さんかも知れません。

私たちは、中心になるテーブルもない部屋で、小さなコーヒーテーブルに関本さんが次々と作ってくれる料理を溢れるばかりに並べ、ビールなどは置く場所もないまま話しはじめました。話題は特に航海のことというのではなく、ごく身近な話を中心に、時折、航海中に船位をプロットした想い出のチャートやログブックやアルバムなどを眺めたりして進みました。気の置けない仲間と語らうのは、本当にいいものです。こんな楽しみを、私は、何年間も忘れていました。

私は、いま書いている航海紀行【仮題・Go over the top(思い切ってやってみよう、というような意味)】の校正のためのプリントアウトを二冊、回し読みして批評を下さいと渡しました。

お会いして、五時間が瞬く間に過ぎてしまい、みんなが帰って行きました。何と、関本さんは、私の晩ご飯のオカズまで作ってくれていました。

早速、みなさんに、Eメールで、遠路お運び頂いて、感謝!というメッセージを送りました。

今日、高原さんから電話がありました。昨日の挨拶に続き、高原さんは、例の校正プリントアウトを一気に読み切ったといってくれました。そして、この後が楽しみだとも。うれしいことです。ものを書いたり作ったりする者には、そういうお褒めの言葉とか激励が、身にしみてうれしいものです。勿論、辛口の批評は、私をさらに高めて下さるものですから、これもまたうれしい助言として承ります。

今日もまた、随分書き進みました。400字詰めにして、もう170枚です。どうやら、日本―カナダ編だけでも200枚を超えてしまいそうです。

彼等は、また伺いますといってくれました。それが、何時実現するか、今から楽しみにしているところです。

9月5日(水)/晴・西の風・26℃・湿度52%/very fine

あれよあれよという内に9月も5日です。何かに夢中になっていると、何時の間にか月が替わっていたといった感じです。

原稿は、快調に進んでいます。今日で187枚になりました。

今は、バンクーヴァーでの出来事を書いています。もうじきバンクーヴァーを出航し、ガルフ・アイランズをクルージングし、はじめてカナダの土を踏んだビクトリアへ戻り、カナダを出国してアメリカへ・・・というところで、この第一編を終えるつもりです。

第2編は、前にもご紹介したように、アメリカ編です。これは、陸上のことをどれだけ含めるかによりますが、あまり長くはならないと思います。第1編を書き上げたら、早速、先日届いた引越し荷物の中から資料を見つけ出し、準備に掛ろうと思っています。

予告ばかりして、皆様にどういう形でご覧いただけるのか、私にも分りません。ホームページに掲載するには、あまりにも長すぎますし、かといって、雑誌の連載やや単行本の発行という当ても特にはありません。まあ、書き進むうち、何かいい考えが浮かぶのではないかと、呑気に構えています。

秋になりました。日中は26℃でしたが、夜は22℃です。虫の声が聞こえてきます。涼しくなったからでしょうか、お風呂がとても楽しみです。今までは、シャワーが主体で、それも水シャワーが心地良かったりしましたが、このところ、毎日お風呂です。

こういう季節になると、温泉なんかが、何となく心に浮かんできます。もうじき、北の方の温泉場からは、紅葉の便りも聞こえてくるでしょう。日本人ですねェー。暑さが過ぎたら、もう温泉ですからね。

とはいえ、温泉に一人で出かけるというほど、温泉マニアでもない私としては、“温泉にでも行きたいなァー”なんて呟きながら紅葉の季節を逃してしまうのかも知れません。でも、木枯らしの吹く季節だって、その場所その場所によって風情というものがあります。ましてや、雪に埋もれた温泉なんか、絶品です。

紅葉の温泉がだめなら、雪の温泉でもいいなァ〜・・・。でも、温泉なんて、どう考えたって一人で行くもんじゃありません。恐らく、やり切れない寂しさか侘しさを噛み締めて帰ってくることになりますから。身も心もしっとりとした風情に潤うような温泉が堪能出来れば、それこそ帰国した甲斐もあろうというものです。そんなことを思いながら、今日も【旅の宿】なんていう入浴剤で湯を緑に染めて慰めています。明日は、登別にしようか?いや、別府もいいなァ・・・?

Zen/西久保 隆


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