昨日までは、もうすぐ春かと思える天気でしたのに、今日は打って変わって真冬の寒さです。皆さん、風邪を引かぬようご注意下さい。
さて、《その先の海》もいよいよ大詰めに差し掛かり、あと3回で終わりです。出版社では、活字離れの昨今、こんなに長い読み物は見向きもされないと出版を断られたほどなのに、それが呆気なく終わることに月日の流れの速さを実感します。
折々、自分が書いた航海記を読み返しながら、南太平洋のあの夢のような日々を懐かしみ、チャンスがあれば、どんな犠牲を払ってももう一度航海をしてみたいと熱い想いをたぎらせております。
そんな折も折、私のPCに見慣れぬメールが飛び込んできました。
発信者は「Nakagawa Hiroshi」となっており、お名前に見覚えがありません。昨今、神経を尖らせているウイルス・メールではあるまいかと訝りながらも、宛名が私のHPで感想を呼びかけているアドレスだったので安心して開いてみました。
何と、「Nakagawaさん」は「禅」が2ヶ月も停泊し、日本のヨットが4艇も舷を並べたあの懐かしいライアテアにお住いの方でした。
ホームページを読んで頂いたらしく、“日本のヨットがこんな小さな島に4艘も集まったなんて驚きです”と書いていました。
しかし、考えてみると、私たちがライアテアに滞在した頃は、確か八千代さんという方が島に住む唯一の日本人だったはずです。不思議に思ってメールを読み進むと、やはり1997年にツアモツからライアテアに移って来られたとのことです。私たちが滞在したのも正に1997年。Nakagawaさんは、越してきてまだ島のことがお分かりではなかった頃だったのです。
懐かしさでひどく長文のご返事を差し上げ、ライアテアの最近の情報をお知らせ頂きたいとお願いすると、折り返しご親切なメールを頂きました。
新情報としては、ライアテアの北のタハア島の東、ボラボラ側のモツ(バリアリーフの小島)にLe Tahaaという超豪華リゾートが出来たこと、タヒチとライアテアを結ぶ定期観光船が就航し、ライアテアの街がすっかりモダンになったこと、ウツロアの街にショッピング・アーケードが出来たこと、そして、当時お世話になった八千代さんご一家がフランスへ引っ越したことなどでした。
また、Nakagawaさんは、私たちが停泊したアポイティ・マリーナのすぐ南のサンセット・ビーチというリゾートの更に南4キロほどのMiriMiriという所に住んでいらっしゃることを知りました。
そのMiriMiriという所はハイキング・コースの入り口で、私たちはNakagawaさんのお宅の前を何度か通ったことになります。また、ボラボラへクルーズする折、ラグーンから外洋へ抜けるパスがそのMiriMiriの沖ということで、私としては忘れることの出来ない場所だったのです。
Nakagawaさんは、新しく出来た豪華なリゾートの隣のモツで黒真珠の養殖場(パール・プランテーション)を営んでいるとのことです。いつもは、そのプランテーションにお住まいで、MiriMiriに戻られた時だけメールが出来るのだそうです。厳しいけど、何ものにも煩わされない大らかな日々を送っていらっしゃるNakagawaさんに、素晴らしい人生を過ごしてくださいとエールを贈るとともに、私も、もう一度あの美しい自然の中に身を置いて、その至福を味わい尽くしたいと心から願っております。
忘れた頃に寒さが訪れる季節です。風邪を召されぬようご自愛下さい。
Zen