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Home2001年1月5日(金)/快晴・32℃・西の風20Kn/fine
あれよあれよという間に、21世紀になってしまいました。遅ればせながら、新年のお慶びを申し上げます。
さて、南半球のお正月というと、これは何とも奇妙なものでして、北半球に育った者には、情緒も何もあったものではなく、ひたすら猛暑に耐え、海辺のトップレスでも眺めて時を過ごしております。
以前は、或る人から送って頂いた注連飾りをバウパルピットに飾ったりしたものですが、この暑さでは飾りの藁がカーリングしてしまい、通りかかる人に“zen、これ、何だ?”と、問われるのも鬱陶しくて、最近は飾らなくなりました。
体調は順調です。というより、少し太ってきました。太ることが健康とは思いませんが、何しろよく食べます。食欲がありよく眠れることは健康であると自負している訳です。いつも食べ過ぎたと反省しながら、それでも毎日食べ過ぎます。原因は、こちらの食品の単位です。例えば、ハンバーグを作るために挽き肉を買うとします。パッケージのいちばん小さいのを探しても600gはあります。冷蔵庫が完全ではなく、しかも小さいものですから、せいぜい二度に分けて(二日続けて)食べ切らなくてはなりません。余ったら捨てればよさそうなものですが、長くヨッティをやっていると食べ物に限らず、物を捨てることが出来ない習性が身につきます。そればかりか、水などは飲み残せば薬缶に戻し、ナフキンがわりのキッチンペーパーは一枚を半分に切って使うといった具合です。何しろ、ヨッティは、時に補給のきかない所に何ヶ月も過ごすことがある訳で、お金は持っていても何の役にも立たないという場合も稀ではありません。そういう訳で、余して捨てるくらいなら食べてしまおうということになります。
ステーキ肉なども、かなり大ぶりです。かといって、大食に慣れた身には半分というのは少なすぎます。アイスクリームなど、シングルでもデッシャーでたっぷり二つ三つ積み上げます。シングルとは、ただコーンのサイズのことであり、アイスクリームとは、こちらの人にすれば、常に山盛りになっているのが当たり前なのでしょう。
サーモンのフィレ(魚は皮と骨を除き、そのままフライパンに乗せるようになっている)など、一切れを25センチのフライパンに乗せると、端っこが鍋の外にはみ出てしまいます。志野か何かのお皿に、上品に緑のツマを添えてなどということは望めません。中型の丼に大根おろしをたっぷり摺って、時々溜息などつきながら、それでも全部平らげてしまう訳です。太る道理ですね。
前回は、visaの驚異的な延長をご報告しました。
そして、次は長期滞留の税金に挑んでいるところです。
この税制とは、外国のヨットが一年間以上AUに滞留すると、輸入と見なされ、一年間の保留期間をおいて、二年目に入った時、船価の5〜8%の仮輸入税とGST 10%を払うというものです。仮に、禅がAU$80,000(約500万円)とすると、税額は最低でも75万円、若しかすると90万円ということになります。
これは、年金生活者にとっては、ほぼ絶望的な金額です。加えて、先の事故で、細々と貯えてきたお金が根こそぎ消えてしまい(約100万円)、残高は2万円ほどしかありません。これから3月頃までに、果たして貯えられるものかどうか?幸い、カードでATMを使うので、一ヶ月先の入金を見越してお金が引き出せることが、何とかなりそうという論拠です。自転車操業とか危ない橋を渡るというのは、こういうことを言うのでしょうが、こちらの大らかな風土に馴染んでいると、不思議に“何とかなるよ”という気分になるから不思議なものです。
さて、その税金ですが、AU滞留二年目は、昨年の10月でした。しかし、ヨットを売りに出している場合は、売れた時点で税を支払うという措置があります。そんな時間稼ぎもあり、また、売れてしまえば、それはそれで仕方がないというイージーな考えで、禅は現在For Saleになっています。もっとも、AUで日本のヨットを売却するのは、容易なことではなく、多分、売れないでしょう。
税金は当然、税関(Customs)の管轄です。非常に親切な協力者であるRonが、CustomsのMr. Clerkに、クルージングパーミット(航行許可書=外国艇は如何なる場合も、AUにある限りこれが必要)の更新について(visaの期限に応じて発給される)尋ねてくれました。Visaが延長になったのですから、当然更新しなくてはなりません。序に、税金のことを尋ねたところ、“Immigrationがそういう形で延長を許可したのなら、課税対象外になるかも知れない”という話だったと、たった今、知らせてくれました。若し、本当なら、VISA延長に続いての大奇跡です。そこまで私の運が上向いたとしたら、ちょっと怖いような気がします。
ただ、Ronは、Mr. Clerkの話し方が非常に早く、よく聞き取れなかったところもあったといっていましたから、来週木曜日、RonといっしょにCustomsを訪ねてみるまでは喜ぶのは控えておくことにします。この結果は、次回のメールでお知らせします。
禅には、雀がたくさん遊びに来て、与えるお米を啄ばんでいます。
初めは、一羽、二羽、ライフラインにとまっている雀に、一茶もどきに“我ときて 遊べや親の ない雀”ってな具合だったのです。ところが今は、親がないどころか、親類縁者を引き連れてやってきて、お米を催促します。鳴き声でそれと分ると、米を一掴みコックピットに撒いてやります。20羽ほどが、楽しげに米をつついているのを見るのはうれしいものですが、その為、コックピットはいつも雀の糞だらけ!しょっちゅう水道のホースを引張ってきて、清掃につとめています。
私の拙い絵や書が、この辺りに随分出回っています。AUは、何かをプレゼントしようとしても、日本ほど気の利いたものはありません。特に、贈り物となると、相手の特性や趣味・趣向が大切です。私は、誰にでもそこそこ当てはまる贈り物は嫌です。それに、あまり高価なものは、私の経済状況から無理ですし、それに相手に余計な気遣いをさせます。そこで思いついたのが、私の手になる絵と書です。残念なことに、この辺りでは良い額縁がなかなか見つからず、多少不本意な部分はありますが、その分、何らかの工夫をします。例えば、風景の中にある船がそれを贈る相手のヨットだったり、或いは、その人と話をした禅哲学に根ざした書だったり・・・。
これは、特にクルージング中、街もお店も何もない所でバースディ・パーティなんて時には非常に有効です。額縁を数点買い置きしておけばいい訳ですから。
この度のVISA取得でお世話になったLyleとRonにもそうでしたし、クリスマス・プレゼントを頂いた方々へも、それから、先頃、家を新築した友人のブレックファスト・パーティによばれた時にも・・・・。ざっと数えてもMooloolabaで私が贈ったものは40点以上にはなります。嬉しい事に、誰もが大喜びしてくれます。
船具屋の女将さんが、私の書を見て、“zen,書きかけの物でいいから、Calligraphyを5,6点譲って貰えないかしら?”といいます。何に使うのと尋ねると、クリスマス・プレゼントにする、というのです。額装を人任せにするのも嫌でしたし、ちょっと変な感じ!とは思いましたが、まあ、いいか、と“禅”とか“夢”とか、“紅花柳翠”なんていうのを差し上げました。いくらか?というので、“私は、以前はプロフェッショナルだったが、今はリタイヤして、作品はただのホビーだから、お金は要らない”といいました。そうしたら、たまたまその時に買ったニスや刷毛やシンナー、それに20mのロープなどを只にしてくれたという実利もありました。
かつては、細いペンでカリカリと紙を削るように、事も無げに0.1ミリメートル単位の細かさでペン画を描いたものですが、今は老眼鏡の底から目を凝らしてやっと描けるといった具合です。それでも、折をみては(或いは、退屈すると)絵や書を書いています。
こちらでは、いろんな日本食品は手に入ります。勿論、満足のいく物とは限りませんが。しかし、書籍とか書道用品となると、これはもう、全く入手の方法がありません。どちらも、本人の厳密な精査を要するもので、何でもいいという訳にはいきません。日本へ一時帰国する折でもあれば、必要不可欠なものは買って帰るつもりですが、なかなかそんなチャンスもありません。これを使い切ったら、もう残りは無いと思いながら使うのも嫌なものです。
先日、色紙の函の底に、和紙の葉書が数枚見つかりました。日頃お世話になっているサポートの方々へ、墨と水彩絵の具でお地蔵さん(笠地蔵の民話)などを描いて年賀状にしました。それでもう、和紙の葉書はお終いです。何かの折に補充することをかんがえなくては・・・と思っていたら、サポートの一人の方が、早速、和紙の葉書を送ってくれました。こちらが何も言わないのに、こんな具合に状況を察して下さるのって、何だか、胸がじーんと熱くなるみたいな悦びです。これでまた、暫くは、我流俳画のお便りがかけそうです。
私のコンピュータ音痴は、全く困ったものです。
弟が、50歳の半ばから独学でコンピュータを研究し出し、今は、同好会のようなものを編成し、パソコン教師と称して活動しているというのに、兄貴の私が、どう取り組んでも埒が明かぬというのはどうした事でしょう。時には、あいつは本当に俺の弟なのか?と思ったりします。
私が、作曲したものをコンピュータに保存したり、或いは、作曲をパソコンでやったりしたいと告げると、弟が音楽ソフトを送ってくれました。しかし、楽譜を編んでも音がさっぱり出なかったり、説明されている言葉が分らないとかで、折角のソフトが全然活かせません。
生来、私は大雑把な性格で、お金の勘定などはまるでダメな絵画や文学タイプ。弟は、何かにつけて非常に几帳面で、数学が得意な学科だったかどうかは分りませんが、真面目に、物事に真正面から取り組むタイプです。凝り性なのは私も弟も同様ですが、本だけ読んで、誰の手ほどきも受けずにコンピュータをマスターする根気は、とても私にはありません。
最近は、ますます混乱し、ますます訳が分らなくなってしまいました。せめて、インターネットにアクセスできる電話でも持てれば、少しは打開の道もあろうかと思いますが、AUでは、電話を所有するシステムが日本と違い、定住地が明確でなければなりません。勿論、インターネットにアクセス出来ないものなら、誰でも持てるのですが。
随分、世間話が長くなりました。新年のご挨拶のつもりでしたのに。御免なさい!
それでは、また。来週は、Customsへ伺った結果をご報告します。どなたも、寒さ厳しき折、風邪を召さぬようご自愛ください。
zen/西久保 隆
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