ご無沙汰しております。
梅雨の晴れ間は、もうすっかり真夏。暑い毎日ですがお元気でしょうか?
ちょっと残念なお知らせです。
現在舵誌で連載中の「その先の海」が、来月9月号で連載を終了します。昨年3月号に始まって18ヶ月(昨年8月号は休載)の連載でした。連載担当の編集部植村デスクには心から感謝を申し上げます。
私が書き上げた本文は舵誌全掲載の三倍近くあります。今までも挟み込みの短編を削除したり、先月号あたりからは南太平洋の最も楽しい部分のスバロフやニュージーランド、フィージー、ニューカレドニアを大幅にカットしたりで、連載終了に向けて短縮されてきました。
連載終了の理由は、舵誌の編集方針の変更で、もっと新しい記事を載せるためです。
確かに、この作品は単行本にもなりにくいほど長大なもので、全部連載すると、さらに3年間ほどは続く分量です。単行本にもならず、連載も中断では残念で仕方がありませんが、私にはどうすることも出来ません。まあ、私の力量不足で、物語そのものが舵誌読者を魅了出来なかったということなのでしょう。
それでも、昨年の8月号で臨時休載した時には、多くの読者から「その先の海」が載っていないとクレームがあったそうです。いくらかの読者にはご期待をいただいていたという事実が、著者としての私のささやかな誇りです。
残るは、このホームページの連載のみです。この連載では一切本文の削除はありませんから、読者の皆様には私が体験した全てをお伝え出来ます。どうぞいつまでもご愛読をお願いいたします。また、舵誌の最終掲載には、このホームページの連載をお知らせしますので、アクセスして下さる方々が急増することが見込まれて楽しみです。
連載終了に先がけ、第五章の最後の部分(このHPの掲載では遥か先になりますが)に「エピローグ」を新たに書き加えました。
それを書きながら思ったことは、私の航海は、まだ終わっていないということです。
航海の終結は、ご存知のように健康上の問題や不慮の座礁事故、その他、私本人の航海のマンネリ化などの事情によるものでしたが、断念という事実には正に断腸の思いがありました。ちょっと大袈裟にきこえるかも知れませんが、航海断念のままでは私は人生の敗者です。絶対にこのままでは終わりたくはありません。既往症として深刻な疾病をいくつも抱えているとはいえ、体と精神力を鍛え直し、5年後の70歳あたりに再度挑戦するチャンスをマジで狙って行きたいと切実に考えております。
しかし、航海を再開するにはそれなりの船が不可欠です。つまり最低1000万円という資金は避けて通れない問題です。1000万円あれば、オーストラリアやアメリカ西海岸でなら、それなりの船が手に入ります。記録を企てたり、広告効果を期待出来るような航海をする訳ではなく、ただ、私自身の人生のこだわりの航海ですからスポンサーを求めるなどということは論外です。
はっきり云って、私にはその資金を調達すべき方法を全く持ち合わせません。それでも、私は航海の再開を熱望し執着し続けようと思います。人生なんて正に小説よりも奇なりです。どこにどんな幸運が待ち受けているかなんて誰にも想像が出来ませんから。
「エピローグ」にも書きましたが、私は今、セールを振るわせる風音と船縁を流れる潮騒を聞きながら、大らかな大洋のリズムで生きています。
先日、シーボニアのクラブレースに行き合わせました。表彰式のパーティーで、レース委員長の鶴木氏の計らいにより私の航海についてお話しする機会を得ました。メンバーの方々には、ささやかな座興としてでもお楽しみいただけたようで、私としてはたいへん満足をいたしました。
みなさん外洋航海の経験もお持ちでしょうが、異なった航海体験もそれなりに何かのお役に立つこともあろうかと思います。何らかの機会があれば、すすんでお話しさせていただこうと考えておりますので、お声をかけていただければ幸いです。
最後になりましたが、猛暑の季節をひかえ、みなさまのご健勝をお祈り申し上げます。
Zen